タイのコンドの「滞納なし証明(デットフリー証明)」の中身
執筆 編集部

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結論
- タイのコンドの名義変更は、管理組織が発行する「滞納なし証明」がないと土地事務所が受け付けません(コンドミニアム法29条)。売主の滞納は、買い手にとって「登記が止まる」問題です。
- 証明書は、所有者が請求してから15日以内に発行する義務が管理者にあります(29条第3項)。発行しない管理者には罰金の定めがあります(68条)。
- 滞納には年12%を上限とする加算がつき、6か月以上の滞納では年20%を上限とする加算、共用サービスの停止、総会での議決権の停止の対象になります(18/1条)。
- 証明書が証明するのは18条の費用(共益費など)の未払いがないことです。規約違反の罰金、建物によって管理組織が代行徴収する水道代、総会で決まった追加徴収の未払いが含まれるかは、建物の運用で違います。証明書とは別に、直近の請求書と領収書を見せてもらいます。
法律で決まっていること(条文の整理)
| 条 | 何が決まっているか | 買い手にとっての意味 |
|---|---|---|
| 18条 | 所有者は、持ち分の割合に応じて共用部の税・費用と管理の費用を分担する | 「共益費」の法律上の根拠。証明書が対象にするのはこの費用 |
| 18/1条 | 期限までに払わないと年12%を上限とする加算(複利なし)。6か月以上の滞納は年20%を上限とする加算、共用サービスの停止、総会での議決権なし。加算は18条の費用として扱う | 滞納の金額は元本だけでなく加算を含む。上限の範囲で実際の率は建物の規約で決まる |
| 29条 | 名義変更の登記は、部屋に18条の費用の未払いがないときだけ受け付ける。管理組織の最新の証明書を提出する。管理者は請求から15日以内に発行する。管理組織が設立される前の移転には適用しない | 売主の滞納があると登記できない。新築の最初の引き渡し(管理組織の設立前)には証明書は要らない |
| 36条 | 管理者は、毎月の収支を月末から15日以内に掲示する。6か月を超える滞納は訴訟で請求する | 掲示された収支で建物全体の滞納の状況を見られる |
| 41条 | 管理組織は滞納分について先取特権を持つ。部屋そのものに対する先取特権は、管理者が債権の一覧を土地事務所の職員に提出していれば抵当権より先の順位になる | 滞納は部屋に「ついて回る」債権として扱われる。銀行のローンがある部屋でも管理組織の債権が先になることがある |
| 68条 | 29条第3項(15日以内の発行)と36条(5)(収支の掲示)に従わない管理者は、5万バーツ以下の罰金と、従うまで1日500バーツ以下の罰金 | 証明書を正当な理由なく出さない管理者には法律上の責任がある |
※ 条文は法制委員会事務局(Krisdika)の改正反映版(タイ土地局サイト掲載)と英訳で照合しました。18/1条・29条の現在の文言は2008年の改正(第4次改正、B.E. 2551)で入ったものです。
証明書が証明すること・しないこと
| 項目 | 証明書に含まれるか |
|---|---|
| 共益費(18条の費用)の未払い | 含まれる(これが証明の対象) |
| 18/1条の加算(遅延の加算) | 含まれる(法律上、18条の費用として扱う) |
| 総会で決まった追加徴収(修繕のための一時金) | 建物による。18条の費用として扱う管理組織が多いが、請求のタイミングで未請求のことがある |
| 規約違反の罰金(短期貸しの罰金など) | 建物による。規約で18条の費用と別に扱うことがある |
| 水道代・電気代 | 建物による。管理組織が水道を代行徴収する建物では未払いが証明書の対象に入ることがある。電気は多くの建物で電力公社との直接契約(バンコクのコンドの電気・水道の名義) |
| 修繕積立金(シンキングファンド)の購入時の一括分 | 通常は最初の所有者が納付済み。中古では残高を決算書で見る(詳しく) |
「証明書があるから何も未払いがない」とは限りません。証明書は発行日の時点の状態を示すものでもあります。発行後、登記日までの日割りの共益費や、月末に出る請求をどちらが払うかは契約で決めます。
買う前に確かめる手順
- 売主に証明書の請求をしてもらう:請求できるのは所有者(売主)です。売主が国外にいる場合は委任状で代理人に任せます。請求から15日以内に出るのが法律上の決まりなので、登記の日取りの3〜4週間前には動きます。
- 証明書と一緒に、直近の請求書・領収書・管理組織の口座の明細を見せてもらう:証明書が対象にしない項目(罰金、追加徴収、代行徴収の公共料金)の未払いがないかを確かめます。
- 建物全体の滞納を見る:管理者が掲示する月次の収支(36条)と年次の決算で、滞納の合計額と割合を見ます。滞納が多い建物は、修繕の資金が足りなくなり、追加徴収や管理の質の低下につながりやすい点を頭に置きます。
- 契約書に条件を書く:「滞納なし証明の取得は売主の義務」「登記日までの共益費・加算・追加徴収は売主の負担」「証明書が取れない場合の解除と手付の返還」を入れます。
- 決済の当日の段取りを決める:滞納が残っている場合は、売買代金から滞納分を差し引いて管理組織に払い、その場で証明書を受け取り、土地事務所へ行く順番を仲介会社・管理組織と確かめます。
- ほかの書類とそろえる:外国人枠の証明(管理組織)、海外送金の証明(FET)、権利証(チャノート)の写し。土地事務所での手続きの全体はタイの中古コンドを買うときの見方にまとめています。
滞納の金額の目安(説明のための例)
| 前提 | 計算 |
|---|---|
| 共益費 月3,000バーツ(50㎡・60バーツ/㎡) | 年3万6,000バーツ |
| 12か月分を滞納 | 元本3万6,000バーツ |
| 加算(6か月以上なので上限は年20%。規約で年20%と定めている建物の場合) | 各月の未払い分に経過月数をかけた単利で、合計の目安は3,900バーツ前後 |
| 合計の目安 | 約4万バーツ |
※ 実際の率は建物の規約で決まり、上限より低いことがあります。加算は複利にできません(18/1条)。数字は説明のための例で、建物ごとに違います。
パタヤやリゾート地の中古で起きやすいこと
- 所有者が国外にいる部屋は、請求書が届かず滞納が長引くことがあります。売主が国外にいる場合は、証明書の請求を代理人に任せる段取りを早めに決めます。
- 短期貸しの罰金は、規約で18条の費用と別に扱われていることがあり、証明書に出ないことがあります。管理組織に「この部屋に未払いの罰金があるか」を別に確かめます(パタヤとバンコクの違い)。
- 建物全体の滞納は、決算の滞納の合計と割合で見ます。滞納が多い建物では修繕の資金が足りなくなりやすいので、追加徴収の決議があるかも合わせて確かめます。
自分で確かめる方法
- 条文:タイ土地局(dol.go.th)のサイトに、法制委員会事務局の改正反映版のPDFがあります。18/1条・29条・36条・41条・68条を見ます。英訳は民間の法律事務所のサイトで読めますが、正文はタイ語です。
- 土地局のQ&A:土地局サイトの「よくある質問」に、滞納なし証明の発行や加算の扱いについての回答が載っています。
- 管理組織:月次の収支の掲示(36条)、年次の決算書、総会の議事録。滞納の合計と、追加徴収の決議の有無を見ます。
- 土地事務所の窓口:物件を管轄する土地事務所に、名義変更に必要な書類の一覧を事前に確かめます。
次に読む
この記事で出てくる言葉
| 言葉 | ざっくりいうと |
|---|---|
| 管理組織(ジュリスティックパーソン) | コンドの共用部を管理し、共益費を集める法人。法律上の名称はニティブッコン・アーカーンチュット(詳しく) |
| 管理者(マネージャー) | 管理組織を代表して実務を行う人または会社。証明書を発行する義務を負う |
| 共益費 | 共用部の維持・管理にかかる費用の分担金。コンドミニアム法18条の「費用」にあたる(詳しく) |
| 滞納なし証明(デットフリー証明) | 「この部屋には18条の費用の未払いがない」と管理組織が証明する書類。タイ語ではナンスー・ラップローン・カーン・プロート・ニー |
| 土地事務所 | 名義変更(移転登記)を扱う役所。物件の所在地を管轄する事務所で手続きする |
| 先取特権 | ほかの債権者より先に弁済を受けられる権利。管理組織は滞納分について持つ |
| 外国人枠 | コンドの外国人所有は建物の49%まで(詳しく) |
| 委任状(POA) | 本人に代わって手続きをする権限を与える書類(詳しく) |
よくある質問
売主が外国にいて、本人が管理組織に請求に行けません。どうしますか?
証明書の請求は所有者(売主)が行うのが原則です。売主が国外にいる場合は、売主が委任状で現地の代理人(弁護士や仲介会社)に請求と受け取りを任せる形が一般的です。委任状の様式と認証の要件は管理組織と土地事務所で先に確かめます。買い手の側は、契約書で「証明書の取得は売主の義務」「登記日までの共益費と加算は売主の負担」と決めておきます。
証明書に有効期限はありますか?
コンドミニアム法は有効期限を定めていません。一方で、証明書は「発行日の時点で未払いがない」ことを示すものなので、土地事務所や管理組織の運用で、発行から一定の日数以内のものを求められることがあります。登記の日取りを決めてから請求し、発行日と登記日の間を空けすぎないようにします。
売主に滞納があるまま買うことはできますか?
滞納が残っていると証明書が出ず、土地事務所は名義変更を受け付けません。実務では、売主が先に清算するか、決済の日に売買代金から滞納分を差し引いて管理組織に払い、その場で証明書を受け取る段取りにします。段取りは仲介会社と管理組織に事前に確かめます。
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補足情報
タイで中古のコンドを買うとき、土地事務所は管理組織(ジュリスティックパーソン)が出す「滞納なし証明」がないと名義変更を受け付けません。コンドミニアム法(B.E. 2522、2008年改正)の29条・18/1条・36条・41条・68条を条文で確かめ、証明書が何を証明し、何を証明しないか(罰金・追加徴収・公共料金)、発行までの日数、滞納の加算率の上限、6か月以上の滞納で起きること、管理組織の債権が抵当権より先になる仕組み、買い手が契約書に入れておく条件を整理します。パタヤやバンコクの中古で売主が国外にいる場合の進め方も扱います。
出典・参考
- พระราชบัญญัติอาคารชุด พ.ศ. ๒๕๒๒(コンドミニアム法 B.E. 2522、法制委員会事務局(Krisdika)による改正反映版。タイ土地局(Department of Lands)サイト掲載のPDF。18/1条(遅延の加算)、29条(滞納なし証明と登記)、36条(管理者の義務)、41条(管理組織の先取特権)、68条(管理者の罰則)を参照)(2026-10-01 参照)
- Thailand Law Online「Condominium Act B.E. 2522 (1979) — translation including 2008 amendments」(英訳。18条・18/1条・29条・36条の文言の照合に使用。正文はタイ語)(2026-10-01 参照)
- กรมที่ดิน(タイ土地局)Q&A「การออกใบปลอดหนี้」(滞納なし証明の発行。管理者は請求受理から15日以内に発行する義務があるとの回答。ページ本文はスクリプト表示のため、検索結果の要約で内容を確認)(2026-10-01 参照)