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解説アメリカ本土

米国の住宅価格「前年比2.6%」「1.9%」「中間価格42万9,100ドル」はどの数字か:FHFA住宅価格指数、S&Pケース・シラー指数、全米不動産協会(NAR)の中間価格の3つの違いと、ハワイの物件で見るべき統計

2026年9月末、米国の住宅価格は報道によって「前年比2.6%上昇」「1.9%上昇」「中間価格42万9,100ドル」と違う数字で伝えられました。数字が違うのは、公表する組織と測り方が違うからです。連邦住宅金融庁(FHFA)の住宅価格指数、S&Pダウ・ジョーンズのケース・シラー指数、全米不動産協会(NAR)の中間価格の3つについて、元データ・対象の住宅・計算の方法・地域の単位・公表の時期を公表資料で確かめ、比べるときの決まりと、ハワイの物件を検討する人が見るべき統計(州別は四半期、オアフ島はホノルル不動産協会の月次、ケース・シラーにホノルルはない)を整理します。

執筆 編集部

計算機と硬貨、家の模型で費用を整理する様子のイラスト
費用・家賃・為替の条件を整理するためのイメージイラスト

この記事で出てくる言葉

言葉ざっくりいうと
FHFA(Federal Housing Finance Agency、連邦住宅金融庁)政府系の住宅金融機関(ファニーメイ・フレディマック)を監督する役所。住宅価格指数を法律にもとづいて公表する
ケース・シラー指数S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスが公表する住宅価格指数。正式名は S&P Cotality Case-Shiller Home Price Indices
NAR(National Association of REALTORS、全米不動産協会)不動産仲介業者の団体。中古住宅の販売件数と中間価格を毎月公表する
リピートセールス法同じ住宅が2回以上売られたときの価格の変化から指数を作る方法
適合ローン(コンフォーミング)ファニーメイ・フレディマックの買い取りの基準に合う住宅ローン。上限額を超えるものはジャンボ
中間価格(メディアン)成約価格を小さい順に並べたときの真ん中の値
季節調整春に売買が増えるなどの季節の癖を取り除く計算
名目・実質名目は物価の変化を含んだ数字、実質は物価の上昇分を差し引いた数字
価格加重価格の高い住宅の値動きに大きい重みをつける計算
大都市圏(MSA)国勢調査局が定める都市圏の単位。ハワイでは「アーバン・ホノルル」が1つの大都市圏

先に結論

  • 米国の住宅価格には、少なくとも3つのよく使われる公表元があり、同じ時期でも数字が違います。2026年7月分は、FHFAの指数が前年同月比2.6%上昇、ケース・シラーの全米指数が1.9%上昇でした。NARの8月の中間価格は42万9,100ドルで前年同月比1.6%上昇です。
  • 違いの理由は3つ。元データ(ローンの記録か、登記所の売買記録か、仲介業者の成約データか)、対象の住宅(ローンつきの一戸建てだけか、現金やジャンボローンの取引も含むか、コンドを含むか)、計算の方法(同じ住宅の値動きを追う指数か、売れた住宅の真ん中の値か)。
  • 比べるときは同じ指標どうしで。前年比は忘れずに同じ公表元の数字で見ます。ハワイの物件を検討する人は、ケース・シラーにホノルルは入っていないこと、FHFAの州別は四半期だけであること、オアフ島のコンドの動きはホノルル不動産協会の月次で見ることを知っておきます。

3つの指標の比べ方

項目FHFA 住宅価格指数S&Pケース・シラー指数NAR 中間価格
公表元連邦住宅金融庁(政府機関)S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(民間)全米不動産協会(業界団体)
元データファニーメイ・フレディマックが買い取った住宅ローンの記録郡の登記所などの売買記録約210の不動産協会・MLS(業者間の物件データベース)の成約
対象の住宅適合ローンつきの一戸建て。現金・ジャンボローン・コンドは入らない一戸建ての通常の売買(現金・ジャンボも含む)。コンドは別の指数一戸建てとコンド・協同組合住宅の中古
計算の方法同じ住宅のくり返しの売買(リピートセールス法)。購入のみの指数が代表同じ住宅の売買ペア。価格加重、3か月移動平均その月に売れた住宅の真ん中の値
地域の単位月次:全米と9地域。四半期:州、大都市圏(上位100)など全米、10都市、20都市(ホノルルは含まない)月次:全米と4地域。四半期:大都市圏
公表の時期翌々月の下旬(火曜)翌々月の最終火曜(2か月遅れ)翌月の中旬
基準1991年1月=1002000年1月=100ドルの金額
2026年7月分前年同月比2.6%上昇(前月比0.3%上昇)前年同月比1.9%上昇(6月は1.6%)8月分:42万9,100ドル(前年同月比1.6%上昇)

なぜ数字が違うのか

元データと対象の住宅

FHFAの指数は、政府系の住宅金融機関が買い取った適合ローンつきの一戸建ての売買だけを使います。FHFAの説明資料は、現金の取引、上限額を超えるジャンボローン、連邦住宅局(FHA)のローンなどが対象に入らないと明記しています。ハワイやアラスカでは上限額が本土の標準より高く定められていますが、それでも上限額を超える取引や現金の取引は対象に入らないため、指数が市場の全体を映さないことがあります。

ケース・シラーは登記所の売買記録を使うので、現金やジャンボローンの取引も入ります。ただし一戸建ての指数で、コンドは別に集計されています。

NARの中間価格は仲介業者の成約データで、一戸建てとコンドの両方を含みます。

計算の方法

FHFAとケース・シラーは、どちらも同じ住宅が2回以上売られたときの値動きから指数を作ります。売れた住宅の構成(広い家が多く売れたか)に左右されにくい設計です。一方、ケース・シラーは価格加重で、高い住宅の動きに大きい重みをつけます。FHFAの説明資料は、この重みのつけ方の違いを2つの指数の差の理由の1つに挙げています。

NARの中間価格はその月に売れた住宅の真ん中の値です。NARの方法の説明にも、住宅の特徴や広さの変化が価格に強く影響すると書かれています。高い住宅が多く売れた月は、1戸ごとの値段が変わらなくても中間価格は上がります。

なめらかさと改定

ケース・シラーは3か月の移動平均で、公表は2か月遅れです。動きがなだらかに出る代わりに、転換点が遅れて見えます。FHFAの月次の指数は単月の値で、翌月以降に改定されます。2026年7月分の発表では、6月の西北中部の前月比が0.6%下落から0.3%下落に直されました。前月の数字を引用するときは、最新の報告書の改定値を使います。

ハワイの物件では何を見るか

見たいこと使う統計頻度注意
ハワイ州全体の値動きFHFAの州別指数四半期(次回は2026年11月24日)2026年4〜6月期は前年同期比5.82%上昇。州単位は取引が少なく振れやすい
月ごとの流れ(ハワイを含む地域)FHFAの9地域の「太平洋」月次カリフォルニア・オレゴン・ワシントン・アラスカと一緒の集計。7月は前年同月比0.7%上昇
オアフ島の戸建てとコンドホノルル不動産協会の月次統計月次(月初)中間価格は売れた物件の構成に左右される。戸建てとコンドの向きが違うことがある(2026年8月は戸建て12.2%上昇、コンド1%下落)
ホノルル大都市圏の指数FHFAの大都市圏別指数四半期適合ローンつきの一戸建てが対象。コンドが多いホノルルの市場の一部しか映らない
主要都市との比較ケース・シラー20都市指数月次ホノルルは含まれない。西海岸はロサンゼルス、サンディエゴ、サンフランシスコ、シアトル、ポートランド

ホノルル不動産協会の統計の読み方はハワイ不動産の数字の見方にまとめています。住宅ローンの金利の指標も、ハワイを集計から除いているもの(フレディマックの週次調査)があります(金利の指標の違い)。

読むときの決まり

  1. 同じ指標どうしで比べる:「FHFAの前年比2.6%」と「ケース・シラーの前月の1.6%」を並べて「伸びが加速した」とは言えません。
  2. 名目と実質を分ける:2026年7月の消費者物価は前年比3.4%上昇でした。名目で2%前後の上昇は、実質ではマイナスです。ケース・シラーのリリースも、実質では14か月続けて下がっていると説明しています。
  3. 季節調整の有無を見る:FHFAの代表的な数字は季節調整済み、ケース・シラーの見出しの数字は季節調整なしの前年比です。前月比を見るときは季節調整済みの値を使います。
  4. 円で見るときは為替を分ける:ドル建ての値動きと、円換算の値動きは別です(円で考える)。
  5. 自分の物件の値段は統計では分からない:近隣の成約事例(CMA)と査定(アプレイザル)で見ます。

自分で確かめる方法

  • FHFA:fhfa.gov の「House Price Index」のページ。月次の報告書(9地域)、四半期の報告書(州・大都市圏)、郵便番号の単位の年次の指数まで無料です。
  • ケース・シラー:S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスのリリース(毎月最終火曜)。時系列はセントルイス連銀のFRED(系列名 CSUSHPINSA)で見られます。
  • NAR:nar.realtor の「Existing-Home Sales」。毎月中旬に販売件数・在庫・中間価格が出ます。
  • ホノルル不動産協会:hicentral.com の「Market Press Releases」。毎月の初めに前月分が出ます。

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よくある質問

結局、どの数字を見ればよいですか?

目的で分けます。米国全体や地域の流れを追うなら、FHFAの指数(月次は全米と9地域、四半期は州と大都市圏)を同じ指数どうしで比べます。主要都市の動きなら、ケース・シラーの20都市指数が向いています。ただしホノルルは入っていません。ハワイの物件なら、州単位はFHFAの四半期、オアフ島の戸建てとコンドはホノルル不動産協会の月次の中間価格を見ます。自分の物件の値段は、どの統計とも違い、近隣の成約事例と査定でしか分かりません。

中間価格が上がったのに、指数が下がることはありますか?

あります。中間価格は「その月に売れた住宅」の真ん中の値なので、高い住宅が多く売れた月は、1戸ごとの値段が変わらなくても上がります。指数は同じ住宅の売買のくり返しから1戸ごとの値動きを取り出すため、売れた住宅の構成に左右されにくい設計です。両方の向きが違うときは、売れた住宅の構成が変わったと考えます。

出典・参考

  1. Federal Housing Finance Agency「FHFA HPI FAQs」(2022年2月更新のPDF。指数の対象(ファニーメイ・フレディマックが買い取った適合ローンつきの一戸建て)、購入のみ指数と全取引指数の違い、月次は全米と9地域・四半期は州と大都市圏、ケース・シラーとの違い(元データ、価格加重、地域の範囲))(2026-10-01 参照)
  2. Federal Housing Finance Agency「FHFA House Price Index Up 0.3 Percent in July; Up 2.6 Percent from Last Year」(2026年9月29日)と月次報告書(Data through July 2026。9地域の表、前月の改定値、公表予定)(2026-10-01 参照)
  3. Federal Housing Finance Agency「FHFA House Price Index Report 2026Q2」(州別の四半期の数字。ハワイ州は前年同期比5.82%上昇)(2026-10-01 参照)
  4. S&P Dow Jones Indices「S&P Cotality Case-Shiller Index Reports Annual Gain in July 2026」(2026年9月29日。全米1.9%、10都市3.4%、20都市2.5%。指数の説明:一戸建ての同一物件の売買ペア、2000年1月=100、3か月移動平均、2か月遅れの公表)(2026-10-01 参照)
  5. FRED(セントルイス連銀)「S&P Cotality Case-Shiller U.S. National Home Price Index(CSUSHPINSA)」(2000年1月=100、季節調整なし、2026年7月は337.306)(2026-10-01 参照)
  6. National Association of REALTORS「Existing-Home Sales — Methodology」(約210の不動産協会・MLSの成約データ。中間価格は全米と4地域で毎月、大都市圏は四半期。住宅の特徴や広さの変化が価格に影響するとの注記)(2026-10-01 参照)
  7. Honolulu Board of REALTORS「Market Press Releases」(オアフ島の月次統計。2026年8月分まで公表)(2026-10-01 参照)

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