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解説インドネシア(バリ島)

ジャカルタの浸水と地盤沈下

執筆 編集部

雨の中の住宅と雨どい・排水路を描いた建物リスクのイラスト
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ジャカルタの地面は、場所によって年に数cmから十数cmの速さで沈んでいます。沈み方が大きいのは海沿いの北部です。北部では大雨のときだけでなく、満潮のときに海の水が陸に上がる浸水(現地ではバンジル・ロブと呼ぶ)も起きます。

地盤沈下の速さと場所

バンドン工科大学の研究者らが2015年に発表した論文は、1974〜2010年の水準測量・GPS・衛星の観測をまとめ、ジャカルタの地盤沈下を次のように説明しています。

  • 典型的な沈む速さは年3〜10cm。場所と時期で差がある
  • 1974〜2010年の約37年で、最大で約4m沈んだ場所がある
  • 海沿いは内陸より速く、海沿いの中でも中部と西部が速い
  • 主な原因は、地下水のくみ上げすぎ、建物の重み、まだ新しく柔らかい堆積土が自然に締まること

ジャカルタ州の水資源局(Dinas SDA)も、北部の沈下を「年に約7.5cm、場所によっては年17cm」とする研究者の見方を紹介しています(2024年12月・2025年5月の公表)。

同じ論文は、沈下の影響として、住宅や建物・道路のひび割れや傷み、川や海からの浸水の範囲の広がり、排水路が働かなくなることを挙げています。浸水と地盤沈下は別々の問題ではなく、つながっています。

北部の満潮による浸水

州の水資源局は、満潮で浸水しそうな日と地区を事前に公表しています。2026年9月10日の公表では、9月29〜30日の18時から、海の水位が平均海面より最大0.45m高くなると見込み、次の地区を挙げました。

地区州の見込み
タンジュンガン高い
ムアラ・アンケ高い
ムアラ・バル高い
マルンダ高い
パサール・イカン(スンダ・クラパ港の周り)中くらい
アンチョール・マリーナと JIS(ジャカルタ国際スタジアム)の周り低い
タンジュン・プリオクとカリ・バル低い

州は、この見込みが堤防の工事や漏れ、風による高波などで変わることも書いています。最新の情報は、州の防災局(BPBD DKI)のページ、州のアプリ JAKI、水資源局の発表で見られます。

2007年11月には、ムアラ・バルの堤防を高潮が越え、深さ1.5mに達する浸水が数日続きました(州の水資源局の説明)。その後、堤防は補強されかさ上げされましたが、地盤の沈下で再び低くなったとされています。

海岸の堤防(NCICD)の進み具合

この浸水を防ぐために、国と州は海岸の堤防の計画 NCICD(首都圏海岸統合開発)を進めています。2014年の基本計画では、次の3段階に分かれています。

段階中身
A今の海岸線と川の河口の堤防
B沖合の西側の堤防
C沖合の東側の堤防

州の水資源局が進み具合を公表しているのは A です。

時点内容
2020年(国と州の覚書)堤防が必要な区間は約46km。2015〜2019年に約13kmができ、残り約33km(国11km、州22km)
2024年11月州の担当20.9〜21kmのうち8.51kmができた
2025年4月末州の担当20.9kmのうち8.5kmができ、12.4kmを工事中。完成の見込みは2030年

州の担当分のうち、ムアラ・バル〜東海岸(4.008km)とカマル・ムアラ(0.765km)はできあがり、パンタイ・ムティアラ、カリ・ブレンチョン、ムアラ・アンケ、スンダ・クラパ〜アンチョール西は工事中か計画中でした(2024年11月時点)。国の担当分の最新の進み具合は、この記事では確かめていません。

雨による浸水と州の対策

雨の浸水は北部に限りません。州知事は2025年5月、1日200mmを超える強い雨では、いつも水が出る地点があるとして、13か所にポルダー(堤防で囲んだ低い土地から、ポンプで水をくみ出す仕組み)とポンプ場をつくる計画を示しました。挙げられた地点には、チリンチン、アンチョール、カユ・プティ、チュンパカ・プティ、チュンカレン、ダアン・モゴットなどがあり、北部に限らず市内の各地にまたがっています。

州は2025年12月、ポルダーとポンプ、ため池、NCICD の堤防、川の改修をまとめた事業「JakTirta」(2025〜2027年度)を始めました。工事が終わった地区で浸水がどこまで減ったかは、まだ公表で確かめられていません。

雨季の時期は、インドネシア気象気候地球物理庁(BMKG)が毎年予測を出しています。2026/2027年の予測では、国の多くの地域で雨季の始まりは11〜12月、雨の多い時期は2026年12月〜2027年2月とされ、強いエルニーニョのため例年より遅いと見込まれています。これは国全体の予測で、ジャカルタだけの時期は BMKG の地域別の予測で確かめる必要があります。

アパートを買う・借りるときに見ること

高い階の部屋なら、部屋に水が入ることはまずありません。困るのは、建物の設備と周りの道路です。

見る場所確かめること
地区北部の海沿い(州の満潮の見込みに出てくる地区やその周り)か。州のポンプ場の計画に入っている地点に近いか
建物の前の道路雨季や満潮のときに冠水するか。何時間で引くか。入り口が道路より高いか
地下の駐車場水の入り口をふさぐ板や、水をくみ出すポンプがあるか。過去に水をかぶったか
受電設備・発電機・ポンプ室地下か地上か。水をかぶると、停電やエレベーター・給水の停止が建物全体に及ぶ
建物と周りの地面外の階段や駐車場の入り口に、段差やひび割れ、つぎ足した跡がないか(地盤の沈下の手がかりになる)
水の出どころ水道(PAM)か地下水か。下の決まりを参照

最後の項目には、州の決まりが関わります。ジャカルタ州知事規則2021年第93号は、床面積5,000㎡以上か8階建て以上の建物について、指定した区域では2023年8月1日から地下水のくみ上げと利用を禁じました(工事中の排水を除く)。区域は付表に通りと地区の名前で並んでおり、中心部のスディルマン通り・タムリン通り、SCBD、メガ・クニンガン、ラスナ・エピセントルム、北部のヨス・スダルソ通りやダナウ・スンテル通りの周りなどが入っています。この区域の高層のアパートでは、水道に切り替えたか、水の量が足りているかを管理側に聞いておくと、断水の心配や水道代の増え方が分かります。

管理組合と保険の備え

浸水で地下の設備が傷むと、修理の費用は管理組合(PPPSRS)の積立金や、所有者からの一時金で払うことがあります。日本から確かめる場合は、次を管理会社や売り手に頼みます。

  1. 過去の総会の議事録で、浸水、ポンプ、受電設備の修理が議題になったか
  2. 修繕の積立の残高と、浸水の修理に使った記録
  3. 建物全体(共用部分)にかけている保険の範囲。浸水や洪水が含まれるか、特約が必要か
  4. 雨季や満潮の後に、建物の前と地下を撮った写真や動画

インドネシアの住宅向けの保険で、浸水が基本の補償に入るか、特約で足すものかは、保険会社と契約によって違います。標準的な約款の扱いは確認中です。部屋の家財を自分でかける場合も、契約書の対象と対象外の項目を読んでください(海外の物件にかける保険)。

管理組合の仕組みと、総会の議事録の読み方はジャカルタのアパートの管理組合(PPPSRS)にあります。

次に読む

地盤沈下の速さは、1974〜2010年の観測をまとめた2015年の論文によるもので、その後の速さは場所ごとに変わっている可能性があります。堤防の長さと進み具合、満潮の見込みの地区、ポンプ場の計画は、ジャカルタ州水資源局の各時点の公表です。地下水の決まりは州知事規則2021年第93号の条文と付表によります。雨季の予測は BMKG の2026/2027年の国全体の予測です。

よくある質問

中心部(スディルマンやクニンガン)のアパートなら浸水は気にしなくてよいですか?

地盤沈下の速さや満潮による浸水の報告は北部の海沿いに集中していますが、中心部でも強い雨の後に道路が冠水することはあります。州の水資源局は、1日200mmを超える雨では各地で局所的な浸水が起きるとして、ポンプ場の増設を計画しています。地区の名前だけで判断せず、建物の前の道路と地下の設備を確かめてください。

海岸の堤防ができれば北部の浸水はなくなりますか?

州の水資源局の公表では、州が担当する海岸の堤防20.9kmのうち、2025年4月末までにできたのは8.5kmで、完成の見込みは2030年です。地盤の沈下が続くと、一度かさ上げした堤防も再び低くなることが、2007年の浸水の後の経緯として説明されています。堤防の進み具合と、物件の周りで最近浸水があったかを分けて確かめてください。

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補足情報

ジャカルタでは地下水のくみ上げなどで地盤が年3〜10cmほど沈み、海沿いの北部ほど速いと報告されています。北部の海岸では満潮で水が上がる浸水が続き、州は海岸の堤防とポンプ場の整備を進めています。アパートを買う・借りる前に見る場所と、州の公表で確かめられることを説明します。

出典・参考

  1. Abidin, H. Z. ほか「Study on the risk and impacts of land subsidence in Jakarta」Proc. IAHS 372, 115–120(2015年)(2026-10-08 参照)
  2. ジャカルタ州 水資源局(Dinas SDA)「Progres Pembangunan Tanggul Pantai NCICD hingga Desember 2024」(2024年12月17日)(2026-10-08 参照)
  3. ジャカルタ州 水資源局「Pembangunan Tanggul NCICD Terus Berlanjut, Berikut Capaiannya hingga April 2025」(2025年5月5日)(2026-10-08 参照)
  4. ジャカルタ州 水資源局「Jakarta Berpotensi Rob 29-30 September 2026」(2026年9月10日)(2026-10-08 参照)
  5. ジャカルタ州 水資源局「Dinas SDA Akan Bangun 13 Polder Guna Atasi Banjir Lokal Jakarta」(2025年5月27日)(2026-10-08 参照)
  6. ジャカルタ州 水資源局「Gubernur Pramono Anung Luncurkan Proyek Pengendali Banjir dan Rob JakTirta 2025-2027」(2025年12月24日)(2026-10-08 参照)
  7. ジャカルタ州知事規則 2021年第93号「地下水の利用を禁じる区域(Zona Bebas Air Tanah)」(州法令データベース JDIH)(2026-10-08 参照)
  8. インドネシア気象気候地球物理庁(BMKG)「Prediksi Musim Hujan 2026/2027 di Indonesia」(2026-10-08 参照)