マレーシア住宅価格指数(MHPI)の読み方
執筆 編集部

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住宅価格の上昇率が鈍化、地域差にも注意
- マレーシアの住宅価格の公的な統計は、財務省の国家不動産情報センター(NAPIC)が四半期ごとに公表する住宅価格指数(MHPI)です。登記された売買の記録から、面積や築年などの条件の違いを統計的に調整して作ります。
- 2026年4〜6月期の速報値は234.7(2010年=100)、前年同期比0.9%上昇。2025年4〜6月期の3.0%から大きく減速し、報告書は「2022年に回復が始まって以来、最も遅い年率の伸び」と書いています。前期比では0.5%の下落で、1〜3月期の0.3%下落に続く2四半期連続のマイナスです。
- 全国の平均価格は50万6,317リンギ(1〜3月期は50万8,923リンギ)。州別の前年比はジョホール3.6%、クアラルンプール2.7%、ペナン0.2%、セランゴール−1.1%で、主要4州の前期比はすべてマイナスでした。
- 住宅の種類別では、高層住宅(コンドなど)が前年比0.9%上昇(前年同期は0.3%)で、他の種類の伸びが鈍る中で唯一前年より伸びが高まりました。テラスハウス1.1%、一戸建て1.1%、半戸建ては横ばいです。
- この指数が示すのは「登記された住宅の売買の価格が、全国ではほぼ横ばいに近づいている」ことまでです。外国人が買える価格帯だけの動きや、特定の建物の値動きは、別に確かめる必要があります。
この指数が測っているもの
住宅価格指数(MHPI)は、財務省の評価・不動産サービス局(JPPH)が登記に伴って集めた住宅の売買の記録をもとに、国家不動産情報センター(NAPIC)が四半期ごとに公表します。開発会社への聞き取りではなく、実際に成立した売買が元データです。
価格の平均をそのまま並べると、ある四半期に高い家が多く売れただけで指数が上がってしまいます。そこでヘドニック法という統計の方法で、土地と建物の面積、築年、町の中心からの距離、階数(高層住宅の場合)、住宅の種類、建物の質、保有の形態(フリーホールドかリースホールドか)、近隣の分類などの条件の違いを調整し、「同じ条件の家」の価格がどう動いたかを測ります。住宅の種類ごとに重みをつけて全体の指数を作ります。基準年は2010年(=100)で、1990年・2000年を基準にした系列も作られてきました。
報告書は全国の指数のほかに、州別(13州とクアラルンプール)と、住宅の種類別(テラスハウス・高層住宅・半戸建て・一戸建て)の指数と平均価格を載せています。主要州(クアラルンプール、セランゴール、ジョホール、ペナン)については、州の中の地域(KL中心部・KL北部・KL南部、ペタリン、ジョホールバルなど)まで分けた変化率も図で示されます。
最新の四半期の数字には「P」がつき、速報値であることを示します。次の報告で改定されることがあるため、前の四半期の数字を比べるときは最新の報告書の値を使います。
2026年4〜6月期の全国の数字
| 項目 | 2026年4〜6月期(速報値) | 比べる数字 |
|---|---|---|
| 指数(2010年=100) | 234.7 | 1〜3月期 235.9、前年同期 232.5 |
| 前年同期比 | 0.9%上昇 | 1〜3月期 2.0%、前年同期 3.0% |
| 前期比 | 0.5%下落 | 1〜3月期 0.3%下落 |
| 全国の平均価格 | 50万6,317リンギ | 1〜3月期 50万8,923リンギ、前年同期 50万1,722リンギ |
報告書は背景として、6月の消費者物価指数の上昇率が1.9%、中央銀行(BNM)の政策金利(OPR)が2025年7月から2.75%で据え置かれていること、住宅の購入向けの家計の借入が5.3%伸びていることを挙げています。中東情勢によるコストの上昇圧力はあるものの、物価への影響は2026年を通じて限定的と見込む、という書き方です。
前年比の推移を見ると、2022年から2024年にかけては3〜5%台の四半期が多く、2025年は4〜6月期3.0%、7〜9月期2.3%、10〜12月期2.5%と2%台に下がり、2026年1〜3月期2.0%、4〜6月期0.9%と1%を割り込みました。
州別の数字(2026年4〜6月期)
| 州 | 指数 | 前年同期比 | 前期比 | 平均価格 |
|---|---|---|---|---|
| 全国 | 234.7 | 0.9% | −0.5% | 50万6,317リンギ |
| クアラルンプール | 207.8 | 2.7% | −0.8% | 82万5,282リンギ |
| セランゴール | 231.4 | −1.1% | −0.3% | 56万1,187リンギ |
| ジョホール | 313.9 | 3.6% | −1.0% | 48万9,881リンギ |
| ペナン | 224.5 | 0.2% | −0.6% | 50万3,388リンギ |
| ヌグリ・スンビラン | 245.9 | 0.9% | 0.0% | 33万58リンギ |
| ペラ | 247.4 | −2.2% | −1.2% | 28万3,162リンギ |
| マラッカ | 236.9 | 4.6% | −0.5% | 26万1,234リンギ |
| ケダ | 256.3 | 2.4% | −0.9% | 33万3,193リンギ |
| パハン | 215.1 | 0.2% | −1.8% | 28万3,924リンギ |
| トレンガヌ | 202.5 | 3.4% | −0.9% | 31万9,093リンギ |
| クランタン | 250.1 | 3.9% | 1.7% | 28万6,198リンギ |
| プルリス | 245.8 | 7.0% | 1.8% | 26万8,383リンギ |
| サバ | 217.7 | 2.9% | 2.6% | 55万8,358リンギ |
※ 報告書の図3と図5から編集部が表にしました。サラワク州は図の一部が読み取れなかったため省いています(平均価格は57万4,099リンギ)。州別の前年比は−2.2%(ペラ)から7.0%(プルリス)の幅があり、主要4州の前期比は−0.3%から−1.0%の間でした。
指数の水準と平均価格は別のものです。ジョホールの指数313.9は2010年からの上がり幅が大きいことを示し、平均価格48万9,881リンギはクアラルンプールの82万5,282リンギより低い水準です。ジョホールは2023〜2025年に前年比5〜9%の四半期が続いた州で、2026年4〜6月期の3.6%はその伸びが鈍った形です。ジョホールの売れ残りの戸数が増えている話はマレーシアのコンドが「売れない・貸せない」と言われる理由で扱っています。
住宅の種類別の数字(2026年4〜6月期)
| 種類 | 前年同期比 | 前年同期の前年比 | 前期比 | 全国の平均価格 |
|---|---|---|---|---|
| 全体 | 0.9% | 3.0% | −0.5% | 50万6,317リンギ |
| テラスハウス | 1.1% | 4.0% | −0.3% | 49万1,820リンギ |
| 高層住宅 | 0.9% | 0.3% | 0.5% | 38万3,864リンギ |
| 半戸建て | 0.0% | 2.8% | −1.8% | 76万4,694リンギ |
| 一戸建て | 1.1% | 3.3% | −1.3% | 69万1,449リンギ |
高層住宅だけが、前年同期の伸び(0.3%)より今期の伸び(0.9%)が高く、前期比もプラスでした。ただし1〜3月期の前期比は3.8%の下落だったため、その反動も含んだ数字です。
高層住宅(コンドなど)の州別・地域別
| 州・地域 | 前年同期比 | 前期比 | 平均価格 |
|---|---|---|---|
| 全国 | 0.9% | 0.5% | 38万3,864リンギ |
| クアラルンプール | 上昇(州の値は図11のみ) | −3.7% | 56万2,326リンギ |
| うちKL中心部 | 5.0% | −6.3% | 61万1,069リンギ |
| うちKL北部 | −4.1% | −2.1% | 57万8,009リンギ |
| うちKL南部 | 6.8% | 0.6% | 41万5,242リンギ |
| セランゴール | 上昇 | 7.4% | 30万4,660リンギ |
| うちペタリン | 1.7% | 8.2% | 40万3,289リンギ |
| うちフル・ランガット | −2.3% | 4.1% | 25万9,210リンギ |
| ジョホール | 上昇 | 0.9% | 27万9,399リンギ |
| ペナン | −0.8% | −0.7% | 37万1,532リンギ |
| うちペナン島 | −1.0% | −0.8% | 40万1,059リンギ |
| うち本土側(セベランプライ) | 1.8% | 0.1% | 14万7,368リンギ |
| サバ | −0.9% | −2.1% | 確認中 |
※ 報告書の本文と表2から編集部が整理しました。報告書は高層住宅の前年比が上がった州として「マラッカ、ジョホール、ヌグリ・スンビラン、クアラルンプール、セランゴール(0.9%から7.2%の幅)」を挙げ、州ごとの値は図11で示しています。図の数字が重なって読み取れない州は「上昇」とだけ書きました。
同じクアラルンプールの中でも、KL中心部とKL南部は前年比で上がり、KL北部は下がりました。前期比ではKL中心部が6.3%下落と大きく動いています。州の指数だけを見ると、市内の向きの違いは見えません。クアラルンプールのエリアごとの借り手や供給の違いはクアラルンプールのエリア別ガイドを参照してください。
ペナンは島側が前年比1.0%下落、本土側が1.8%上昇と逆向きでした。島側と本土側の価格と外国人の決まりの違いはペナンの不動産にまとめています。
テラスハウス・半戸建て・一戸建て
- テラスハウスは前年比1.1%上昇。州別ではセランゴール(−0.6%)とヌグリ・スンビラン(−0.7%)が下がり、プルリス(9.0%)などが上がりました。主要州の地域別では、KL北部・KL中心部、ペタリン、スパン、フル・ランガット、ジョホールバルを含むジョホールの多くの地域、セベランプライ、ペナン島が前年比で上がり、クアラ・セランゴール、ゴンバック、クラン、バトゥパハット、KL南部が下がりました。全国の平均価格は49万1,820リンギ、クアラルンプールは97万7,286リンギです。
- 半戸建ては前年比で横ばい(0.0%)。セランゴール(−5.7%)、ペラ(−3.4%)、ペナン(−1.8%)が下がり、マラッカ(7.4%)、パハン(7.0%)、クランタン(6.1%)、ヌグリ・スンビラン(5.0%)、クアラルンプール(4.1%)が上がりました。全国の平均価格は76万4,694リンギ、クアラルンプールは238万654リンギです。
- 一戸建ては前年比1.1%上昇。クアラルンプール9.4%、ジョホール3.2%、ペナン1.8%が上がり、セランゴールは3.6%下がりました。前期比では全国で1.3%の下落です。全国の平均価格は69万1,449リンギ、クアラルンプールは284万9,001リンギです。
半戸建てと一戸建ては取引の件数が少なく、1四半期で大きく振れることがあります。前年比9.4%や−8.3%といった数字は、1つの四半期だけで判断しないほうがよい区分です。
読むときの注意(編集部)
- 全国の指数は「平均的な家」の動きです。マレーシアで戸数の多いテラスハウスの重みが大きく、外国人が買える価格帯(州ごとの最低購入価格以上)の物件だけを切り出した数字ではありません。
- 高層住宅の区分には低価格のフラットも入ります。全国の平均価格38万3,864リンギは、クアラルンプールの最低購入価格(100万リンギ)を大きく下回ります。外国人が検討する建物の値動きとは別のものとして読みます。
- 前年比と前期比の向きが違うときは、前期比を2四半期以上並べて見ます。2026年は1〜3月期・4〜6月期と2四半期続けて前期比がマイナスでした。
- 速報値は改定されます。4〜6月期の数字は「2026P」で、次の報告(7〜9月期分)で変わることがあります。記事や資料の数字が改定前か後かを確かめます。
- 指数は名目です。物価の変化(6月の消費者物価指数は1.9%上昇)を差し引くと、全国の実質の価格は前年比でマイナスに近い水準です。この比較は報告書には載っていないため、読者が自分で並べて見る必要があります。
- 売れ残りの統計と一緒に見ます。価格の指数がほぼ横ばいでも、完成済みで売れていない住宅の戸数は2026年上期に3万3,094戸へ増えています(マレーシア上期の不動産取引)。価格が下がらずに在庫が増える局面では、売る側の値引きや特典が指数に表れにくいことに注意します。
自分で確かめる方法
- NAPICのサイト(napic.jpph.gov.my)の「Latest Publication」を開き、「Malaysian House Price Index」の最新の報告書(PDFか電子書籍)を開きます。報告書は半期ごとに前の四半期とまとめて出ます(今回は「Q1 - Q2 2026P」)。
- 1ページ目の「Overview」で全国の指数・前年比・前期比・平均価格を見ます。図1には2022年以降の四半期ごとの前年比が並んでいます。
- 2〜3ページ目の図3(州別の前年比)と図5(州別の前期比)で、検討している州の数字を見ます。図の下の表に指数と平均価格が載っています。
- 高層住宅を検討しているなら、7〜8ページ目の「High-Rise Unit Price Index」で、州と地域(KL中心部・ペタリン・ペナン島など)の前年比・前期比を見ます。表2に地域別の平均価格があります。
- 「Data Visualisation」のページでは、全国の指数と前年比、種類別・主要州別の変化をグラフで見られます。
- 業者の資料の数字と比べるときは、期間(四半期か年か)、範囲(全国・州・地域)、住宅の種類、速報値か改定値かをそろえます。そろわない数字を並べて「上がっている」「下がっている」と判断しないようにします。
次に読む
- マレーシア上期の不動産取引は18万7,320件・1,051億リンギ、売れ残りの住宅は3万3,094戸に増加
- マレーシア(ジョホールバル)のコンドが「売れない・貸せない」と言われる理由
- マレーシアで外国人が物件を売る流れ
この記事で出てくる言葉
| 言葉 | ざっくりいうと |
|---|---|
| 住宅価格指数(MHPI) | Malaysian House Price Index。マレーシアの住宅価格の動きを示す公的な指数。2010年=100 |
| NAPIC | 国家不動産情報センター。財務省の評価・不動産サービス局(JPPH)の一部門で、不動産の統計を公表する |
| 評価・不動産サービス局(JPPH) | 財務省の部局。不動産の売買の登記に伴う評価を行い、取引のデータを持つ |
| ヘドニック法 | 面積・築年・場所などの条件の違いを統計的に調整して、「同じ条件の家」の価格の変化を測る方法 |
| 速報値(P) | Preliminary。報告書の「2026P」のPで、次の報告で数字が改定されることがある |
| 高層住宅(High-Rise Unit) | コンドミニアム、アパート、フラット、サービスアパートメントなど、区分所有の住戸をまとめた区分 |
| テラスハウス(Terraced) | 壁を共有して横に連なる戸建て。マレーシアで最も戸数の多い住宅の形 |
| 半戸建て(Semi-Detached)・一戸建て(Detached) | 2戸で壁を共有する戸建てと、独立した戸建て |
| 前年比(YoY)・前期比(QoQ) | 前の年の同じ四半期と比べた変化率・直前の四半期と比べた変化率 |
よくある質問
業者から「マレーシアの住宅価格は毎年3〜5%上がっている」と言われました。この指数で確かめられますか?
確かめられます。全国の指数の前年比は、2022〜2024年には3〜5%台の四半期が多くありましたが、2025年は2〜3%台に下がり、2026年1〜3月期が2.0%、4〜6月期が0.9%でした。NAPICの報告書は4〜6月期の伸びを「2022年に回復が始まって以来、最も遅い」と書いています。説明がどの期間の数字を使っているか、全国か州か、どの種類の住宅かを聞き、この報告書の図1と図2の数字と並べて見ます。
外国人が買うことの多いコンドやサービスアパートメントの価格は、この指数のどこを見ればよいですか?
住宅の種類別のうち「高層住宅(High-Rise Unit)」の指数です。2026年4〜6月期は前年比0.9%上昇、前期比0.5%上昇で、全国の平均価格は38万3,864リンギでした。ただし、この区分には地元の人が買う低価格のフラットも含まれ、外国人の最低購入価格を超える物件だけを切り出した数字ではありません。クアラルンプールの高層住宅はKL中心部が前年比5.0%上昇、KL北部が4.1%下落と、同じ市の中でも向きが違います。
前年比がプラスなのに前期比がマイナスなのは、どう読めばよいですか?
前年比は1年前と、前期比は3か月前と比べた数字です。4〜6月期は前年比0.9%上昇ですが、1〜3月期から見ると0.5%下がりました。1〜3月期も前期比0.3%の下落だったので、2四半期続けて3か月前より下がっています。1年前との比較ではまだプラスでも、直近の向きは下向き、という読み方になります。速報値(P)のため、次の報告で改定されることがあります。
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補足情報
マレーシアの住宅価格指数(MHPI)は、2026年4〜6月期に前年同期比0.9%上昇、前期比では0.5%下落しました。全国平均だけでは見えにくい州別・住宅種類別の違いと、速報値を扱う際の注意点を解説します。
出典・参考
- National Property Information Centre(NAPIC、財務省 評価・不動産サービス局)「Indeks Harga Rumah Malaysia / Malaysian House Price Index Q1 - Q2 2026P」(報告書PDF、12ページ。全国・州別・住宅の種類別の指数と平均価格、前年比・前期比の図表)(2026-10-01 参照)
- NAPIC「Latest Publication」(上記の報告書の掲載ページ。「Malaysian House Price Index H1 2026」として電子書籍版とPDFを掲載)(2026-10-01 参照)
- NAPIC「Data Visualisation — MHPI」(全国の指数と前年比、種類別・主要州別の四半期の変化を見るダッシュボードの一覧)(2026-10-01 参照)
- Kassim, Redzuan & Harun「What Drives House Price in Malaysia? In Search of an Alternative Pricing Benchmark for Islamic Home Financing」(Planning Malaysia, Vol.15 Issue 4, 2017。評価局の2016年4〜6月期の報告書を引いて、指数がヘドニック回帰で作られること、種類別の重み、基準年が1990・2000・2010の3つあることを説明。指数の作り方の確認に使用)(2026-10-01 参照)
- 海外不動産.com「マレーシア上期の不動産取引は18万7,320件・1,051億リンギ」(2026年9月10日の財務省の発表の要約。指数234.7・前年比0.9%の数字の照合に使用)(2026-10-01 参照)