フィリピン中央銀行の住宅価格指数(RPPI)の読み方:銀行の住宅ローンから作る指数で現金購入は入らない。2026年1〜3月期は全国で前年比4.5%上昇、マニラ首都圏のコンドは前期比13.2%上昇。四半期で大きく振れる理由と、自分で確かめる方法
フィリピンの住宅価格の公的な統計は、中央銀行(BSP)が四半期ごとに公表する住宅価格指数(RPPI)です。銀行が実行した住宅ローンの取得価格から作るため、現金購入や開発会社への分割払いは入りません。2026年1〜3月期の報告書(全国 前年比4.5%上昇・前期比5.6%上昇、マニラ首都圏 前年比3.5%・前期比10.4%、コンドの反発、ローン件数は前期比23.9%減)と技術ノートをもとに、地域の区分、種類別の数字、ウエイト(首都圏と周辺6州で75.6%)、四半期ごとに大きく振れる理由、次回公表日(2026年9月25日)、読者が自分で確かめる手順を整理します。
執筆 編集部

この記事で出てくる言葉
| 言葉 | ざっくりいうと |
|---|---|
| BSP(Bangko Sentral ng Pilipinas) | フィリピンの中央銀行 |
| RPPI(Residential Property Price Index) | BSPが四半期ごとに公表する住宅価格指数。2025年1〜3月期から旧指数(RREPI)を置き換えた |
| RREL(Residential Real Estate Loan) | 銀行が個人に貸した住宅ローン。RPPIの元データ |
| ヘドニック法 | 広さ・築年数・場所などの違いを統計的に取り除いて、価格の変化だけを取り出す方法 |
| NCR(National Capital Region) | マニラ首都圏。マカティ、BGCのあるタギッグ、ケソン市など16市1町 |
| AONCR(Areas Outside NCR) | 首都圏以外の全域 |
| Balance GMA | 首都圏の周辺6州(バタンガス、ブラカン、カビテ、ラグナ、パンパンガ、リサール) |
| Metro Cebu | セブ市、マンダウエ、ラプラプ、タリサイなどセブ島の都市圏 |
| Metro Mindanao | ダバオ都市圏とカガヤン・デ・オロ都市圏 |
| 前年比・前期比 | 1年前の同じ四半期との比較・直前の四半期との比較 |
| 社会住宅(socialized housing) | 政府の価格上限の下で供給される低価格住宅。RPPIの対象外 |
先に結論
- RPPIは、銀行(ユニバーサル・商業銀行、貯蓄銀行、デジタル銀行)が実行した住宅ローンの取得価格(建物+土地)から作る指数です。現金購入、銀行以外の取引、社会住宅は入りません。外国人の現金購入や、開発会社への分割払いで買う完成前のコンドは、この指数には反映されにくいと考えて読みます。
- 2026年1〜3月期は、全国で前年比4.5%上昇・前期比5.6%上昇。前年同期の伸び(7.6%)よりは鈍く、直前の2四半期(2025年7〜9月期、10〜12月期)は前期比で下落していました。
- マニラ首都圏のコンドは前期比13.2%上昇と反発しましたが、前年比では3.7%上昇にとどまります。BSPは、開発会社の販促と柔軟な支払い条件(特に完成済み物件)が背景にあるとしています。
- 同じ期に、住宅ローンの件数は前期比23.9%減でした。価格が上がっても取引が増えているわけではない、という読み方が要ります。
- 指数のウエイトは首都圏と周辺6州で75.6%。セブ都市圏(ローン件数の6.3%)やミンダナオ(5.3%)は件数が少なく、四半期の数字が振れやすい区分です。
- 次の公表は2026年9月25日(4〜6月期)、その次は12月23日(7〜9月期)の予定です。
2026年1〜3月期の数字(地域別)
| 地域 | 前年比 2025年1〜3月期 | 前年比 2026年1〜3月期 | 前期比 2025年4〜6月期 | 前期比 7〜9月期 | 前期比 10〜12月期 | 前期比 2026年1〜3月期 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 全国 | 7.6% | 4.5% | 4.2% | −3.8% | −1.3% | 5.6% |
| マニラ首都圏(NCR) | 13.9% | 3.5% | −3.6% | −0.8% | −2.0% | 10.4% |
| 首都圏以外(AONCR) | 3.0% | 5.7% | 10.5% | −5.9% | −0.7% | 2.5% |
| 周辺6州(Balance GMA) | 3.8% | 9.7% | 11.7% | −6.1% | 0.2% | 4.3% |
| セブ都市圏 | −1.7% | 9.4% | 12.2% | −8.0% | 4.6% | 1.3% |
| ミンダナオ2都市圏 | 7.6% | 1.3% | 1.9% | −0.9% | −1.0% | 1.4% |
| その他の地域 | 1.1% | −4.7% | 10.2% | −6.4% | −5.8% | −1.9% |
出典:BSP「RPPI First Quarter 2026」Figure 1a・1b。マイナスは下落。
首都圏は2025年4〜6月期から3四半期続けて前期比で下落した後、2026年1〜3月期に10.4%上昇しました。BSPはこの反発が全国の前期比プラス転換を主導したと説明しています。
種類別(コンドと住宅)
| 区分 | 前年比 2026年1〜3月期 | 前期比 2025年4〜6月期 | 前期比 7〜9月期 | 前期比 10〜12月期 | 前期比 2026年1〜3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 全国・コンド | 4.6% | −2.8% | −1.4% | −1.7% | 11.1% |
| 全国・住宅 | 3.9% | 10.3% | −5.7% | −0.9% | 0.8% |
| 首都圏・コンド | 3.7% | −5.4% | −1.4% | −1.8% | 13.2% |
| 首都圏・住宅 | 1.3% | 1.9% | 1.1% | −2.5% | 0.8% |
| 首都圏以外・コンド | 8.4% | 4.0% | −1.3% | −1.3% | 7.1% |
| 首都圏以外・住宅 | 4.6% | 12.3% | −7.1% | −0.6% | 0.8% |
出典:同 Figure 2a〜2c。
コンドは全国・首都圏・首都圏以外のいずれも、2〜3四半期の前期比マイナスの後に大きく反発しています。一方、前年比で見ると首都圏のコンドは3.7%で、1年前の同じ数字(14.2%)より鈍っています。前期比の大きな数字と前年比の小さな数字が同時に出るのは、その前の期に下がっていたからです。どちらか一方だけを引用した資料には注意が要ります。
ローンの件数:価格と取引は別に見る
| 区分 | ローン件数の前年比 2026年1〜3月期 | ローン件数の前期比 2026年1〜3月期 |
|---|---|---|
| 全国(全種類) | 1.3% | −23.9% |
| 首都圏(全種類) | 7.6% | −14.6% |
| 首都圏以外(全種類) | −1.1% | −27.1% |
| 全国・コンド | 10.4% | −34.1% |
| セブ都市圏(全種類) | −23.6% | −7.7% |
出典:同 Figure 3a・3b。
BSPは、件数の減少について、住宅購入への消費者心理が引き続き弱いこと(家を買うのに良い時期と答えた世帯は24.2%)と、銀行が住宅ローンの審査を厳しくしたこと(貸出担当者調査)を挙げています。1〜3月期のローンのうち77.6%は新築、22.0%が中古、0.4%が差し押さえ物件で、地域では周辺6州が40.1%、首都圏が29.1%でした。
指数の作り方(技術ノートから)
- データ源:BSPの通達(Circular No. 892、2015年11月16日。2022年9月14日の Circular No. 1154 で改定)に基づき、すべての銀行が四半期ごとに住宅ローンの明細(実行月、所在地、新築・中古・差し押さえの区分、住宅の種類、取得価格、鑑定額、床面積、敷地面積、階数、寝室数、築年数、開発会社名など)を報告します。
- 対象:家計が銀行ローンで取得した住宅。現金購入・銀行以外の取引・社会住宅は対象外。価格は建物と土地を合わせた取得価格です。
- 方法:区分(地域×種類)ごとにヘドニック法(時点ダミー)で価格変化を推計し、改定を避けるために直近4四半期の窓で計算します。上位の指数は、前年の取引額の割合をウエイトにして合成します。2026年のウエイトはコンド46.3%、住宅53.7%で、首都圏と周辺6州の合計が75.6%です。
- 公表:BSPの先行公表カレンダーに沿って四半期ごとに公表します。2025年1〜3月期から旧指数RREPIをRPPIに置き換え、2025年6月にヘドニック法を採用しました。
読むときの注意(編集部)
- 現金で買う外国人の取引は入らない。日本人がよく検討する完成前のコンドは、開発会社への分割払いが多く、銀行ローンが実行されるのは完成時か、実行されないままです。RPPIが上がっていても、自分が検討するセグメントの需給を示すとは限りません。
- 件数の少ない区分は振れる。セブ都市圏は2025年1〜3月期に前年比マイナス1.7%、翌年の同期にプラス9.4%と、1年で方向が変わっています。ローン件数の6.3%しかない区分なので、1四半期の数字で判断しない方が読み違えが減ります。
- 前期比と前年比を両方見る。前期比の反発は、その前の下落の反動を含みます。
- 業者の資料の「想定利回り」とは別の話。価格指数が上がっても家賃が同じなら利回りは下がります。家賃の見方はフィリピンの家賃相場の見方に整理しています。
- 民間の調査と合わせる。BSP自身も報告書でコリアーズ(不動産サービス会社)の市場報告を引用しています。指数の背景(在庫、販促の内容)は民間の報告で補い、数字はBSPで確かめる、という使い分けができます。
自分で確かめる方法
- 報告書:BSPのサイトの「Publications and Reports」→「Residential Property Price Index (RPPI)」に四半期ごとのPDFがあります。地域別・種類別の表(Figure 1〜3)と、地域の定義(最後のページの Table 1)を見ます。
- 統計表:同じページから Excel の統計表が取れます。長い期間の推移を自分で並べるときに使います。
- 公表日:BSPの「Advance Release Calendar」に四半期ごとの公表日が載ります。4〜6月期は2026年9月25日、7〜9月期は12月23日の予定です。
- 作り方:「Technical Notes on the Hedonic RPPI」に、対象・データ源・方法・ウエイトの説明があります。
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よくある質問
業者から「フィリピンの不動産は毎年○%上がっている」と言われました。RPPIで確かめられますか?
RPPIは銀行の住宅ローンで買われた住宅の価格指数なので、全体の傾向はつかめますが、現金や開発会社への分割払いで買われた物件、特定の建物の価格は反映しません。2026年1〜3月期は全国で前年比4.5%上昇ですが、その前の2四半期は前期比で下落しており、地域と種類で数字は大きく違います。業者の数字がどの統計のどの期間を指しているかを聞き、RPPIの報告書の表と照らすのが確かめ方です。
自分が検討している建物の価格の動きは、RPPIで分かりますか?
分かりません。RPPIは地域(首都圏、周辺6州、セブ都市圏、ミンダナオの2都市圏、その他)と種類(コンド、住宅)の区分までです。個別の建物は、同じ建物の直近の成約事例を管理会社や仲介会社から集めて見るしかありません。RPPIは「地域全体が上がっているか下がっているか」を確かめる材料として使います。
出典・参考
- Bangko Sentral ng Pilipinas「Residential Property Price Index — First Quarter 2026」(報告書PDF、2026年6月26日作成)(2026-09-24 参照)
- Bangko Sentral ng Pilipinas「Technical Notes on the Hedonic Residential Property Price Index (RPPI)」(指数の作り方:対象・データ源・ヘドニック法・ウエイト・公表)(2026-09-24 参照)
- Bangko Sentral ng Pilipinas — Residential Property Price Index (RPPI) 公表ページ(四半期の報告書一覧)(2026-09-24 参照)
- Bangko Sentral ng Pilipinas — Advance Release Calendar(RPPI 4〜6月期は2026年9月25日、7〜9月期は12月23日公表予定)(2026-09-24 参照)
- BSP Circular No. 892(2015年11月16日)— 銀行の住宅ローン四半期報告(RREL)の義務(2026-09-24 参照)
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