海外不動産の税金 総まとめ:家賃・売却・相続・減価償却・確定申告を、はじめての人向けに
海外に不動産を持っても、日本に住んでいる人は日本で税金を申告します。家賃をもらったとき、売ったとき、相続したときに何が起きるか、むかし「節税」と呼ばれた仕組みが今どうなっているかを、国税庁の情報にもとづいてやさしく整理します。
執筆 編集部

この記事の読み方
税金の話は言葉が難しいので、先に「この記事で出てくる言葉」を書いておきます。ここだけ読めば、あとは読み飛ばしても大丈夫です。
| 言葉 | ざっくりいうと |
|---|---|
| 居住者 | 日本に住んでいる人。海外に物件があっても、日本で申告する側 |
| 不動産所得 | 家賃から経費を引いた「もうけ」。これに所得税がかかる |
| 譲渡所得 | 物件を売って出た「もうけ」。これにも所得税がかかる |
| 減価償却 | 建物の値段を、何年かに分けて毎年少しずつ経費にすること |
| 損益通算 | 不動産の赤字を、給料などの黒字と相殺して税金を減らすこと |
| 外国税額控除 | 海外で払った税金を、日本の税金から差し引く仕組み |
| 国外財産調書 | 海外にある財産の一覧表。5,000万円を超える人が提出 |
この記事は、編集責任者が国税庁の公開情報と照らし合わせて確認しています。税理士による監修ではありません。あなたの税金が実際にいくらになるかは、国際税務に詳しい税理士に相談してください。
先に結論
- 日本に住んでいる人は、海外の物件の家賃も売却のもうけも、日本で申告します。 計算はすべて日本円に直して行います。
- 「海外の中古物件で節税」は、個人ではもう使えません。 2021年分から、減価償却で出た赤字を給料などと相殺できなくなりました。
- 海外で払った税金は、日本の税金から差し引けます。 ただし、全部が戻るわけではありません。
- 海外の財産が5,000万円を超えたら、一覧表(国外財産調書)を出します。
- 相続のときも、海外の物件は日本の相続税の対象になることが多いです。
- 会社(法人)で持つと、ルールが変わる部分があります。 個人向けの説明を、そのまま会社に当てはめないでください。
1. だれが日本で税金を払うのか
日本に住んでいる人(住所がある、または1年以上住んでいる人)は「居住者」と呼ばれ、日本国内で得た収入も、海外で得た収入も、まとめて日本で申告します。海外に物件があっても、あなたが日本に住んでいるなら、その家賃と売却益は日本の税金の対象です。
反対に、海外に移住して日本に住んでいなくなった人(非居住者)は、日本国内で得た収入だけが日本の税金の対象になります。海外の物件の家賃は日本では課税されません。ただし「住んでいるかどうか」は、住所や滞在日数といった事実で決まります。書類を出せば変わる、というものではありません。
2. 家賃をもらったとき(不動産所得)
- 家賃の収入から、現地の管理費、固定資産税、修理代、ローンの利息、減価償却費などの経費を引いた残りが「不動産所得」です。この金額に所得税がかかります。
- 収入も経費も、原則としてその日の為替レートで日本円に直して計算します。
- 現地でも家賃に税金がかかっている場合、その税金は日本の税金から差し引ける可能性があります(後の「6. 海外で払った税金」で説明します)。
3. 減価償却と、「節税」が終わった理由
建物は年数がたつと価値が下がるので、買った値段を何年かに分けて毎年少しずつ経費にします。これが減価償却です。
古い建物ほど「残りの使える年数」が短く見なされるため、経費にできる金額が大きくなります。以前は、アメリカなどで築年数の古い木造住宅を買い、数年で建物の値段の大部分を経費にして、その赤字を日本の給料と相殺して所得税を減らす方法が「節税」として売られていました。
2020年度の税制改正で、この方法は個人では使えなくなりました。 2021年分の所得税から、海外の中古建物の減価償却で出た赤字は「なかったもの」として扱われ、給料などとの相殺(損益通算)ができません。なお、「なかったもの」とされた減価償却費は、その建物を売るときの計算で調整されます。
このルールは個人の所得税の話です。会社(法人)が物件を持つ場合は対象外で、通常どおり減価償却できます。ただし、会社を作って維持するにはお金がかかり、会社のお金を自分に戻すときにも税金がかかります。「会社で買えば税金が減る」と単純に考えるのは危険です。
4. 売ったとき(譲渡所得)
海外の物件を売ったときの「もうけ」は、譲渡所得として日本で申告します。
- もうけ = 売った値段 − (買った値段 + 売るときにかかった費用)。すべて日本円に直して計算するので、買ったときと売ったときの為替レートの差も、もうけや損に含まれます。
- 持っていた期間が5年を超えるかどうかで税率が変わります。これは日本国内の物件と同じ考え方です。
- 現地で売却益に税金がかかる、または売却代金から先に税金分を差し引かれる(アメリカのFIRPTAなど)場合、その税金は日本の税金から差し引ける可能性があります。
- 日本の「自宅を売ったときの3,000万円控除」のような特例は、海外の物件では使えないことが多いです。使える前提で計画しないでください。
5. 海外で払った税金(外国税額控除)
現地で所得税にあたる税金を払った場合、その分を日本の所得税から差し引けます。ただし上限があります。上限は「その年の日本の所得税 × 海外の所得 ÷ 全部の所得」で計算され、上限を超えた分は3年間は翌年以降に持ち越せます。差し引くには、現地で税金を払った証明書が必要です。現地の税金が日本の税金より多い場合、その差額は戻ってきません。
6. 海外の財産の一覧表(国外財産調書)
12月31日の時点で、海外にある財産の合計が5,000万円を超える人は、翌年6月30日までに「国外財産調書」を税務署に出します。物件は原則としてその時点の価格(時価または見積額)で書きます。出していれば、申告漏れがあったときの罰金(加算税)が軽くなり、出していないと重くなります。
7. 相続・贈与
亡くなった人や相続する人が日本に住んでいるなど一定の場合、海外にある物件も日本の相続税の対象になります。海外の物件の評価は、日本の路線価のような一律の方法がないため、実際の売買事例や現地の鑑定書などをもとにした「そのときの価格」で行います。評価の根拠になる資料(現地の評価書、取引の記録)を残しておくことが大切です。現地でも相続税にあたる税金がかかる場合は、二重にならないよう調整する仕組みがあります。
8. 国ごとの注意点(かんたんに)
| 国 | 現地の主な税金 | 日本側で特に気をつけること |
|---|---|---|
| ドバイ(UAE) | 個人の所得税・売却益の税・固定資産税がない。買うときに登録料4% | 現地で払う税金がないので、家賃も売却益も日本で全額が課税される |
| タイ | 家賃に所得税、売るときに税金の先引き(源泉徴収)など | 現地で先引きされた税金の証明書を保管し、日本で差し引く資料にする |
| ハワイ・アメリカ | 家賃に連邦と州の所得税、売るときにFIRPTA(連邦)とHARPTA(州)の先引き | 先引きは「仮払い」。アメリカで申告して精算し、精算後の税額で日本の控除を計算する |
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よくある質問
海外で税金を払っていれば、日本では何もしなくていいですか?
いいえ。日本に住んでいる人は、世界中どこで得た収入でも日本で申告します。海外で払った税金は、条件を満たせば日本の税金から差し引けます(外国税額控除)。
節税のために海外の中古物件を買う話を聞きました。今も有効ですか?
個人の場合、2021年分から使えなくなりました。海外の中古建物の減価償却で出た赤字を、給料などの黒字と相殺することができなくなっています。会社(法人)で持つ場合はこのルールの対象外です。
国外財産調書とは何ですか?誰が出すのですか?
海外にある財産の一覧表です。12月31日の時点で海外の財産が合計5,000万円を超える人が、翌年6月30日までに税務署に出します。出さないと、申告漏れがあったときの罰金(加算税)が重くなります。
出典・参考
- 国税庁 タックスアンサー No.3560 居住者が海外の不動産を売却した場合の課税関係等(2026-09-23 参照)
- 国税庁 タックスアンサー No.1391 不動産所得が赤字のときの他の所得との通算(国外中古建物の特例)(2026-09-23 参照)
- 国税庁 タックスアンサー No.1240 居住者に係る外国税額控除(2026-09-23 参照)
- 国税庁 国外財産調書制度(FAQ)(2026-09-23 参照)
- 国税庁 タックスアンサー No.4138 相続人が外国に居住しているとき/国外財産の評価(2026-09-23 参照)
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